前立腺肥大症は一番内側の内腺が子宮筋腫のように腫れる病気で、良性の腫瘍です。男の子宮筋腫に相当します。
原因
遺伝子が変化して起こりますが、前立腺は男性ホルモンで成長します。この為高齢になって男性ホルモンが少なくなると前立腺は萎縮するのではないかと考えられていた時期もありました。
しかし男性ホルモンだけでなく女性ホルモンも関係しているようで、最近では加齢と共に前立腺は肥大する一方だということが判っています。肥大するスピードは人によって異なるようです。
症状
肥大症が出来る内腺は尿道に一番近い部分ですから、肥大した腺腫によって尿道が圧迫され、圧迫症状が出ます。また前立腺は膀胱の出口にありますので膀胱の刺激症状も出ます。この圧迫症状(排尿困難)と刺激症状(頻尿等)が主な症状です。
肥大の大きさと症状は比例しません。むしろ小さい肥大症の方が症状の強い場合が多いのです。
この為手術する症例の大半は小さい肥大症です。東南アジアの人は小さい肥大症が多いようですが、何故小さい肥大症なのに症状が強いのかについては未だ分っていません。
圧迫症状(排尿困難)
- すぐ尿が出てこない
- 尿の線が細い
- 尿の勢いが弱い
- 最後の切れが悪い
- 終わっても未だ残っているような感じがする
等の症状です。
刺激症状
- 頻尿
- 排尿したい感じが急に起こる
- 時に我慢できずに漏らしてしまう
等の症状です。
頻尿ははトイレに何回も行く状態を言います。夜寝ている間にトイレに何回も起きる夜間頻尿も起こります。
診断
症状と排尿困難の程度を調べたり、直腸から直接前立腺を指で触れたり、超音波やX線、MRI等のような画像を使って診断します。
排尿困難は機械を使って1秒間に何ml排尿できるか調べる方法があります。
一番勢いの良い時で1秒間に15ml以上あれば一応大丈夫です。1秒間に 15mlというのは尿の線の太さでいうと割り箸1本の太さ位です。尿の線が割り箸1本よりも細いようならあなたは排尿困難が起こっています。
治療
前立腺肥大症の治療には薬物療法、物理療法、手術療法等があります。
薬物療法
- α1ブロッカー
- ホルモン製剤
- 生薬系
等があります。
1:α1ブロッカー
前立腺の中には多くの筋肉繊維があります。この筋肉の緊張をとって尿を出やすくする薬です。
ハルナ-ル、アビショット、フリバス、ユリーフ等があります。
2:ホルモン剤
前立腺の大きさが2~3割小さくなって尿が出やすくなります。しかし止めると元の大きさに戻ってしまいますし、大きくなるのを防ぐことは出来ません。
ホルモン剤といってもそう強くありませんのでインポテンスになったりするようなことはありません。
パーセリン、プロスタール等があります。
3:生薬系
漢方薬や植物由来の薬です。前立腺の周りの浮腫みを取ったり、炎症を鎮めたり、血流を良くする等の作用があります。
エビプロスタット、セルニルトン、八味地黄丸等があります。
物理療法
いろいろな熱源を使って前立腺を暖める治療です。熱源としてはマイクロ波、ラジオ波、超音波等が使われます。
- 高温度治療
- 温熱療法
等があります。
1:高温度治療
45度以下の温度で前立腺を暖める治療です。
温熱には細胞致死効果があって主に癌の補助療法として行われています。簡単に言うと電子レンジと同じ原理ですが、コンピューターで管理されていて危険はありません。
一回1時間で終わります。1~2年効果が持続するといわれています。尿が出やすくなって、特に頻尿に良く効きます。
当クリニックではサーメックス前立腺高温度治療装置を使っています。
2:温熱療法
45度から70度の温度で前立腺を暖める方法です。
こっちの方が高温度といわれそうですが、温熱療法のほうが後に出来たからこういう名前になったのです。70度近い高温で前立腺を暖めます。
手術療法
内視鏡手術と開腹手術がありますが、現在では開腹手術は殆ど行われていません。
内視鏡手術にはTURP(経尿道的前立腺切除術)やレーザー等の電磁波や超音波を用いた手術があります。
TURP
前立腺肥大症の手術で最もよく利用されるのがTURP(経尿道的前立腺切除術)といわれる手術方法です。
尿道から内視鏡を挿入し、内視鏡で前立腺の患部を観察しながら、内視鏡の先端についている電気メスで肥大した患部を切り落とします。
この為前立腺癌の予防にもなりますし、前立腺癌の治療としても有効な手術法です。
前立腺凝固、蒸散療法
レーザー等を熱源にした内視鏡手術で、前立腺の一部を切除する手術です。しかしTURPには敵わなかったようで、今では多くの施設が再びTURPを行うようになって来ています。